幸福のハードル

今週のお題「生活の知恵」

 

普段、絵を描いている。

iPhoneからシャッフルで流れるMaroon5を聞きながら、好きなものを好きなように、好きなだけ描き続ける。

しかし、一度集中するとやめ時がわからなくなり、食事もろくにせず、昼に描き始めたのに気が付けば深夜になっている、なんてことがざらにある。

今日がまさにそんな日だった。

散らかりきったデスクの上を見ると、空腹を誤魔化すために飲み続けたコーヒーの空き缶やいろはすのペットボトルがそこら中に転がっていた。

目の前の惨状に一度目を伏せキッチンに行き、冷蔵庫の中身を確認する。

何もない。

いや、厳密に言えば、ポン酢とケチャップ、それから残りわずかなピュアセレクトのマヨネーズしかない。(私にはマヨネーズは絶対にピュアセレクトがいいという謎のこだわりがある)

仕方なく冷凍庫の中身を確認してみると、6個入りの冷凍たこ焼きが顔を出した。

私はすぐさまそれを取り出し、袋を開けて電子レンジに突っ込んだ。

オレンジ色の光に照らされながらたこ焼きたちが回る、回る。

長らく冷凍庫の中で震えていたたこ焼きたちによる舞踏会が、今まさに開かれたのだ。

舞踏会を終えた彼らを取り出し、付属していたソースと冷蔵庫にあったわずかなマヨネーズをかけて、大きく開けた口へと運ぶ。

空腹と疲労で衰退していた私の心と身体が、幸福で満たされていくのを感じる。

 

ああ、幸せだ。

 

人はよく「幸せになりたい」と口にするのに、「幸せである」とは口にしない。

それって少しおかしい。

何を幸福とし何を不幸とするかなんて、私たち、自分自身が決められることなのに。

幸福の追求なんて変だ。

幸福は、追いかけずとも常に私たちの隣にある。

 

Maroon5が新曲をリリースした。幸福。

 

スーパーに行ったらピュアセレクトが特売品になっていた。幸福。

 

深夜に食べた冷凍たこやきが美味しかった。幸福。

 

幸福のハードルを下げて、バカみたいに笑いながら生きていけたらいい。

私にとっての「生活の知恵」である。